VS四條畷 この大会に懸けてきた想いと道のり
2021/10/10
1年前、広田組が引退したあとのチームは、2年生の選手がおらずマネージャー2人のみ。1年生の選手は18人しかおらず、合同チームをギリギリ回避している状況であった。歴代のOBが築き上げてきた伝統も失われていた。負けが当たり前だと思っていた。
そんなどん底にいたチームの前に現れた男。
"平田瑞貴"
早稲田摂陵ラグビー部に語り継がれる伝説の代。
大阪府花園予選決勝に進出し、常翔学園と対決した平田組の元主将だ。
リアルリーダーがグラウンドに帰ってきてからの日々は、今まで体験したことのない景色が広がっていた。
勝つことの嬉しさ。負けることの悔しさ。本気でぶつかる覚悟。
1日1日を過ごす中で、全員の心の中にある何かが大きく変化していった。
そうして迎えた秋季大会。ついにこの日がやってきた。
この日のためにどれだけの努力をしてきただろうか。
辛かった。苦しかった。辞めたいとも思った。初めて本気でラグビーに向き合った。
全力でぶつかったからこそ、全員が本気で勝ちを目指した。
このチームに経験者が少なくても、相手が3年生でも、関係ない。 俺たちがやってきた事全てを出そう。60分後笑うのは俺たちだ。
「全力で勝ちに行くぞ」
早稲田のプライドを背負った男達の叫びが、グラウンドに響き渡った。
試合開始の笛が鳴る
前半10分はいくつかミスはあったものの、相手にプレッシャーを与えてアドバンテージをとり、攻め続けた。
スクラムハーフの吉用が相手の隙を突いて大きくボールを運ぶ。
ゴールラインまであと5m。
四條畷3年生の意地 対 早稲田としてのプライドの戦い
何度か押し返されながらもATし、声を出し続けた。
そして、パスをなんとか繋ぎ、トライ。メンバー15人、リザーブ、マネージャー、応援してくれる人達の想いが継ながった瞬間。
このチームにとって公式戦初のトライであり、歴史的なトライだった。
フィールド上の15人の選手達がトライを決めたロック東浦に駆け寄り、抱き合い喜んだ。
ところが、前半戦ラストプレーで一瞬の隙を突かれトライを決められる。
早稲田摂陵5-7 集中力の勝負で四條畷が一歩上回る。
勝利を確信していた者は少なかったかもしれない。
だが、勝ちを諦める者は誰一人としていなかった。
後半戦、あと30分で全てが決まる。
両者ともに一歩も引かなかった。
思うようなプレーが出来ず、焦りが出てきた後半20分。
DFの間を抜かれトライされる。5-14 さらに焦りが増す。
ウォーターブレイクで水を運んだ時、3年生マネージャーの2人は涙を流していた。
それをみた15人の荒ぶる魂に火がついた。
何が何でも勝たなければ。
時計は残り10分を示していた。時間がない中攻め続けた。
相手陣内22mラインでスクラム。
スペースを見つけてボールを運ぶ。
フォワードからバックスへ着実にパスを繋ぐ。
四條畷も必死にDFを固めていたが、勢いに乗った赤黒戦士を止められる者は誰もいなかった。
またも、スクラムハーフ吉用の判断でトライ。全員で勝ち取ったトライだった。
点数差4点。あとワントライ必要だった。
残り時間5分でのウォーターブレイク。
全員で勝ちに行ってるんやぞ。ここで決めたるで。と仲間を鼓舞する声がする中、フィールドの真ん中に水を運びにきた3年生マネージャー2人が涙ながらに叫んだ。
「絶対もう一本とるで!」
最後まで誰一人として諦めなかった。
早稲田摂陵ラグビー部全員が"勝利"を目指す姿勢は見る者の胸を熱くした。
ノーサイドの笛が鳴る。 10-14 その場に倒れ込む選手達。
この日のために血が滲むような努力をしてきた。
全力で支えてくれた3年生マネージャー。
いつも応援してくださる保護者の皆様。
現役生に期待を、夢を乗せてくれたOB。
大の男が嗚咽を抑え切れなくなるほど涙する姿は心揺さぶられた。
全員が本気でやってきたからこそ、この試合の"負け"は全員に重くのしかかった。
すぐには立ち直れないかもしれない。
すぐに前を向けないかもしれない。
だけど、変えられるのは今だけだから。これからの事だけだから。
どんなに苦しくても、辛くても、挫けそうになったとしても、前を向かなきゃならない。
今日のような涙を流すことがないように、今度は嬉し涙を流せるように、後悔なく進みたい。
どんなに辛い日々が待ち受けていようとも、俺たちは戦う。
早稲田の誇りを背負った赤黒戦士達よ。
ワセダの名を轟かせろ。
この屈辱を胸に、絶対に勝つ。
最後に、応援して下さった皆様へ。
試合結果は惜しくも敗退となってしまいましたが、3年生マネージャー仲田・伴海の2人のために上級生相手にも怯まず最後まで全力でぶつかりました。
これからも早稲田摂陵ラグビー部を宜しくお願いします。ありがとうございました。