VS金光藤蔭 「ロスタイムの悲劇。天国と地獄の淵を彷徨った5分間」
2017/04/21
18-17.
あと1回プレーが切れればノーサイド。どこかに今までの早稲田なら逃げ切れるだろうと誰もが思っていた。早稲田なら・・・・・
しかし、運命の赤い糸は最後の最後で切れた。この2か月、ずっと何かを探していたのに。
試合のラストワンプレーまで紡いできた勝利へのプランは結ばれることなく、最後の最後でほどかれ、一瞬にしてハッピーエンドからバッドエンドにストーリーは変わった。
勝利の女神は我々には微笑まず、絶望と失望、そして虚無感でしばらく立ち上がることはできなかった。きっとこの結末には意味があるのだろう。その理由はこれから果てしなく続く険しい道で見つけていかなければならない。
先週までとは打って変わって夏を思わせる天気。
時計は後半35分を指していた。ロスタイム5分間の攻防の結末は、あまりにも早稲田摂陵にとっては残酷だった。
ほぼ手中に収めていた勝利。99%といっていいかもしれない。それでも残り1%の可能性がある限り勝負はわからない。
「野球は2アウトから」
そんな世界がラグビーにもある。あった。その恐ろしさと怖さを学んだ試合。反対に金光藤蔭はその1%を信じていたに違いない。それが今年の金光藤蔭の強さの一つだと身をもって感じた60分だった。
新人戦準優勝の金光藤蔭。今年の金光藤蔭は強いとあらゆる方面から情報が入り、実際に新人戦で同じ会場で見た彼らのフィジカルとブレイクダウンの強さは我々の遥か先を走っていた。
対して今年の早稲田摂陵高校ラグビー部・三宅組。歴代の中で最もフィジカルに対するこだわりが低く、ベクトルを自分たちに向けることができていない集団。それは自分に対する誇りの欠如とチームに所属している意識の欠如。そんな厳しい言葉を並べられる中で最も早稲田ラグビーにおいて嫌われる言葉「現状維持」
改善、前進、向上、それがなければ組織は衰退してしまう。どうもそんなにおいが充満していた。
「居心地が良い環境」とは成長を妨げているのだ。
そんな彼らに課せられた新人戦終了後からのノルマ。しかし、彼らの90%が成し遂げてきた。そんな彼らの意地が芽生えてきたこの2か月。
しかし、ラグビーをほとんどしてこなかった彼らがこの試合に完全にフィットすることはなかった。
この2か月間のプランニングのミスだったか?いや、多少の劣勢はあったものの、新人戦であったフィジカルの差とブレイクダウンの差はだいぶ埋まっていた。
それならば、試合を分けたのは間違いなくゲームメイクだろう。
ゲーム開始1分、試合の入りが最も大切だと意識していたにも関わらず、痛恨のインターセプトでトライを献上し、出鼻をくじかれた。その後も浮き足立ち、金光藤蔭最初のラインアウトからの攻撃で簡単にフロントラインを破られると、バッキングしたバックスリーも無抵抗でゴールラインを明け渡す展開。前半10分で0-14とリードされる苦しい展開に。気持ちもさることながらゲームをマネジメントするリーダーの不在が今の早稲田摂陵。
そんな中でもなんとか金光藤蔭のプレッシャーをかいくぐり、前半のうちに2トライを返し12-14とゲームの体裁を整える。
後半最初にチャンスを掴んだのは早稲田摂陵。相手の反則からゴール前でペナルティーをもらうとPGを選択し、15-14と逆転する。この試合で初めてリードを奪う。
ここから試合は捻じれて絡まって、ときには戻って、シーソーのように立場が次々に入れ替わる展開に。後半23分にはゴール中央で反則を犯し、金光藤蔭がお返しとばかりにPGを選択し15-17.
「まだ7分ある。グランドの外からはもう一度チャンスがある」との声
残り3分でゴール前ペナルティーをもらうとPGを再度選択し、再び逆転に成功する。このまま逃げ切れる。タイムマネジメントとエリアマネジメントの徹底と声が飛び交うが、ワンプレーゲームが切れたあとのマイボールラインアウトで衝撃の展開。FWが全員モールに入り、時間を使いながらゲームを進める中で、BKに展開。そして何を思ったかフォローワーがいない中でCTBの縦をチョイス。誰がスイープ。時間は何分。エリアはどこ。まったくもって答えのないチョイスに次に起こることはレフリーが笛を吹くこと。ゲームを見なくてもレフリーの右手が挙がると確信した。そして、案の定ペナルティー。敵陣10mの正面で金光藤蔭がチョイスしたのはPG。万事休す。全員が紡いできた勝利へのプランはBKに壊された。
しかし、幸運にもそのPGは外れ、リードしたままロスタイムへ。そこから敵陣深くにロングキックでエリアを挽回する。あと1プレー切れれば試合は終了する。今までの歴代の早稲田、赤黒集団なら・・・・・・・・・・
だが、まるで足に鉛が付けられた如く、前に出ないでDFする早稲田。赤黒ジャージを着ているとは思えない受け身のタックル連発。止めるには止めるがまったくもって奪う、プレッシャーをかけることがないDFの原則を無視した態度にボールを継続されること5分。ついに集中力が切れ、フロントラインを突破されると、バックスリーも追い上げる金光藤蔭の選手をもはや捕まえる体力はなく、インゴールを明け渡した。喜ぶ金光藤蔭の選手たちを横目に地面に崩れ去る赤黒を着た男たち。18-24.
勝つチャンスはあった。ゲームを自ら終わらせる方法や機会もあった。しかし、誰一人としてラグビーのゲーム構造とすべきゲームメイクをせずにいた。そうなれば、この展開も仕方ない。気持ちだけではスポーツは勝てない。
野村克也監督の著書
「負けに不思議の負けなし」
その通り。ゲームが終わって悔しがるのは誰でもできる。なぜ、その前の準備をしていなかったのか?ゲームまでの準備は完璧だったのか?
答えはノーだろう。誰かに任せる。あいつがするから。俺には関係ない。
プレーではない日頃のマインドセットから生まれるたものだろう。
そんな言葉が誰しも胸に刺さった予選リーグ1戦目。
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