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VS関西大学第一高等学校 「早稲田摂陵高校ラグビー部初のシード権獲得!強い意志が人生の道を切り開く」

2015/04/26

人生の中でこんなにも熱くなれる瞬間があるのだろうか?
人生を振り返った時にどの時間を思い出すのか?
高校3年間は人生の中で一瞬である。それでもこの3年間こそ、人生の生き方を決める指針になるだろう。
一生懸命に時間を費やした出来事の中には、喜怒哀楽が必ず生まれる。

 

そして、そこには最高の仲間がいる。熱は人を動かす原動力。熱さは人に伝わり、さらに周りの者に伝わってくる。

ワセダラグビーの根底にある「熱」こそ絶やしてはいけないものであり、ワセダのラガーマンが持つべきDNAの一つである。いつになっても語り継がれるストーリーには熱がある。そこに登場する人物は愚直で、夢を信じ、仲間を信じ、一つのボールに魂を込めていた。

「夢を持て。人の痛みをわかる人間になれ。意志のあるところに必ず道は開ける。自分の好きなことができるように努力しろ。一人で見る夢よりも多くの人間で見る夢はいい。」

4月26日、歴史は動いた。

このリーグを早稲田摂陵が2位で勝ち抜くとは誰も思っていなかった。可能性にしてみれば15%ぐらいだろうか?それでも、その可能性を信じ、絶対に勝つという強い気持ちで挑んだリーグ戦。 間違いなく自らの手で勝ち取って得た目標のシード権。

 

先週の浪速高校戦の激戦から1週間。                  

この日の試合は、早稲田摂陵高校ラグビー部初のシード権獲得がかかっていた。

一回目の津志田組。                         

早稲田摂陵史上最強と言われていたが、シード権を獲得できず、大阪の高い壁に阻まれた。あらゆる面において準備不足だった。強みがなかった。

二回目の平尾組。                          

次こそはと挑んだ戦いにまたしても阻まれ、獲得できなかったシード権。このシード権こそ、秋の結果に直結するものであり、何が何でも獲得したいものだった。

3回目のチャレンジであったが、史上最弱と言われていた二ノ丸組。    

その男たちの逆襲。チームとしてのまとまりは今までで最高なのかもしれない。この大会を経て、そのまとまりを得たということだ。自分たちの弱さを認識し、自分たちのすべきことをまじめに準備する男たちは自らのチャンスを引き寄せるために、体を張った。今までにない武器を手に入れて・・・

1週間前、ノーサイドの笛が鳴り響いた時から獲得したチャンス。トライするたびに全員が喜びを爆発させる光景は、いかに自分たちが追い込まれていたかを表していた試合であった。

「タイト」

このタイトな試合経験無くして、成長はない。それも公式戦でこの緊張感を得たことが急激にチーム力を押し上げる力になった。浪速戦の最後10分間は練習試合や練習では決して得ることができない場面であった。
 

今回の対戦相手は関西大学第一高等学校。二ノ丸組がスタートしてから練習試合では2回対戦しているが、2試合とも敗戦していた。勤勉さとインテリジェンスを持ち合わせたチームであり、過去の2試合ともゲーム運びと駆け引きの部分で相手に上回れ、いつのまにかゲームが終了する流れであった。その負けていたことが、我々には危機感を増大させた。数名の選手を除いては・・・・

高校生の発想は単純だ。

「俺たちは浪速高校に勝ち、浪速高校は関西大学第一高等学校に勝った。だから勝てる。」

そんな足し算引き算でラグビーを考えている選手がいた。しかし、ラグビーはそんな単純計算で勝ち負けが決まるほどそう甘くない。だからこそ、より一層の勝負に対する厳しさを求めた。これまで先輩たちが超えることができなかった壁だからこそ難しい試合。



この1週間はコンディションを整える、戦術確認、メンタル面を準備することにこだわった。そして、前回と同じく負けたら終わりであると言い続けた。

まずはけが人が多く、ベンチには5名の交代選手かおらず層が薄いことも考えコンディションを整えることに注力した。個人練習時間の設定と練習後のケアの徹底など必要以上に練習することを避け、より一層の集中したトレーニングをうながした。

戦術確認は先週の自分たちの反省点を抽出し、よりクレバーなゲームメイクをするように戦術を考えた。相手は過去の対戦データも活用しお互い手の内はわかっているのでゲームメイクが大切であるとミーティングで話した。

メンタル面の向上。勝ったことでの気の緩みが明らかに見受けられた。自分たちは強くないことを自覚し、チャレンジャー精神で行かなければどのチームに勝つこともできない。

この3点が揃えば、ゲームは引き締まったものになる。

1週間の練習はミスに対してのリアクションと責任をとるプレー、トランジションを意識したトレーニングなど意識で改善する部分をトレーニングには多く入れ、最後には1対を試合と同じような状況で行った。

アップからほとばしる熱さ、先週と同等、それ以上のこのゲームに懸ける思いの強さ。すべては3年生の背中。ハドルではその3年生が2年生を鼓舞し、この試合の重要性を説く。ワセダの3年生として、ワセダとして、3年間を懸ける試合。秋の大会ではなく、今やらなければすべてが終わってしまう。今までのどの代にもなかったこの大会に懸ける意気込みが二ノ丸組にはあった。                     
北風のあと、泣きながら試合に入っていく上級生の姿はワセダとしての生き様を見せる背中であった。

「ワセダを体現してきます。」

「すべては仲間のために。」

「そして自分の3年間のために。」




13時半キックオフ。
とにかくこの日は暑かった。それ以上にワセダのこの試合に懸ける意気込みも熱かったことは間違いない。人生を懸けて戦うと宣言してきた男たちは最初からエンジン全開で相手に襲いかかる。

この日も安定していたのはFW。敵陣ゴール前に進み、相手を貼り付けにすると、何回か相手のペナルティーがあった後のラインアウトから、FWが押し込み先制点を挙げる。5−0

先週は自らが最初にミスしたことで、自陣に張り付けられ、先制点を許した。その反省点を生かし、今度は先制に成功した。これまでの練習試合で敗戦しているチームとしてはとても大切な先制点であった。

2トライ目は相手がインゴールから攻めてきたボールをDFして得たゴール前スクラム。ここからFWが近場にこだわり、ゴール中央の固いDFを1歩1歩進んで破り、トライを決めた。12−0

その後も、中盤での攻防を制し、フェイズを重ねたあと大外で待っていた3年・徳川が左隅にトライを決める。このリーグ戦から急成長し練習中の姿勢や発言などチームを鼓舞してきた男のトライはチームにより一層の勇気を与えた。19−0

前半最後には自陣のゴール前まで攻められるが、3年の小林、三宅、木原、二ノ丸が体を張ったDFで相手のミスを誘い、前半終了の笛を迎える。
その前のプレーではタイムマネジメントが不足して相手に得点のチャンスを与えたことは次の試合では修正しなければいけない点だが。


ハーフタイムではコーチ陣がアドバイスすることを二ノ丸主将が自ら発言する。

「前半は忘れよう。0−0だと思って後半勝負しよう。前回の試合でもこの30分で試合は決まり、最後までわからない状況になったから。」

いくつかの修正点が各コーチからあり、後半に向かってコーチからゲキが飛んだ。

「人生を大きく変える30分。自分で運命を手繰り寄せろ。」

人生をどのようなストーリーにしていくかは自分たち次第。後悔しないように今すべてをかけようと誓った。そして、もう一度この試合に懸けていた想いを伝えた。歴代のOBのために戦うことも忘れずに。

 

後半開始してからも集中力が切れない。ただし、関西大学第一高等学校も何度も対戦したこともあり、我々に対応するプレーをしてくる。得点が取れなければ、こちらもDFするまで。激しいDFでこちらも応戦して、自陣に入らせない。しばらく中盤での攻防が続いたが、ゴール前に入ったところでFWがモールからトライで後半の先制点を挙げる。

その後も中盤の攻防を繰り返すが、チャンスフェイズではミスを繰り返し、ピンチを招いた。それでもミスしたボールをセービングしたのはワセダ。この1週間、セービングを繰り返し、相手に奪われそうになったボールを追いかける責任感を練習では厳しく追及した。その成果は確実にあった。相手に裏に抜けられてもいち早く帰り、DFラインを整えた。

最後はペナルティーを奪取し、タッチラインに蹴り出し試合終了の笛を迎えた。その瞬間、早稲田摂陵高校史上初のシード権を獲得した!赤黒戦士達は抱き合い、涙を流しながら整列した。

この日、早稲田摂陵高校ラグビー部の歴史に1ページを加えた二ノ丸組。ずっと下級生に甘え続け、3年生としての姿勢を見せることができていなかった男たちが追い詰められた状況下で発揮した一人の男としてのプライド、ワセダのラガーマンとしての生き方。自分たちの生き方を見つけ、3年間のすべてを懸けると誓える場所を得たことは何よりも大きい。

「グランドに熱い気持ちをぶつけてくる。」

誰が見ても、そう感じられる2試合であった。              

人には勝負しなければいけない時がある。守らなければいけないものがある。そんなとき、自分はどのような行動と発言、態度を周りに示すことができるのか。

ラグビーは人を育てるスポーツである。コーチや保護者の想像を上回る成長をしたリーグ戦。プレーはもちろんだが、人としても。レギュラーはもちろんのこと、リザーブ、けが人、OB、保護者が一体となって勝ち取った勝利。ラグビーをしようか、他のスポーツをしようか迷っている1年生にラグビーの素晴らしさと、ワセダラグビーの熱さを感じ取ってもらえたこともさらに良かった。



次はついに未知なる領域Bシード決定戦。対戦相手は未定。だが、一つ言えることはワセダは全力を尽くして試合に挑む。自分の人生の中で最高に熱い3年間のために。